今回は、35歳の前田幸平さん(仮名)にお話を伺いました。
会社員として生活はできていたものの、“もっと楽にお金を増やしたい”という気持ちからFXを始めたという前田さん。
最初は余剰資金でコツコツ取引していたそうですが、ある時から“これはいける”という強い確信が生まれ、キャッシングで一気に資金を増やして本格参戦。
結果として、ロスカットを何度も経験し、気づけば消費者金融3社に借金が膨らんでいたといいます。
「勝てると思っていた自分が一番怖い」と語ったその言葉には、軽い気持ちで始めた投資が静かに崩れていく過程が詰まっていました📘
最初は10万円だけ、コツコツやってるつもりでした
──FXを始めたきっかけは何だったんですか?
前田さん:「副業とか資産運用とか、いろいろ調べてたんですよ。
SNSとかYouTubeで“初心者でもスマホで稼げる”って見て、試しにやってみようと
10万円だけ口座に入れて、最初の1ヶ月くらいは1万通貨ずつポジション持ってました。
“勝ったり負けたりでトントンならいいか”って感覚で、まだこの頃は冷静でしたね😌」
──そのときの収支はどうだったんでしょうか?
前田さん:「月トータルでマイナス5千円とか、それくらいですね。
“まぁ勉強代”くらいに思ってましたし、あんまり落ち込んでもなかったです。
ただ、負けて悔しかったのは確かなので、“次はもっと勉強して勝とう”って思ってました」
3日で5万円勝った瞬間、“これはいける”ってスイッチ入っちゃいました
──状況が変わり始めたのはいつ頃でしたか?
前田さん:「ある日、たまたま指標発表前にドル円をロングで入ってたら、ドンピシャで上がって。
たった3日で5万円勝ったんですよ。“これ、普通に才能あるんじゃない?”ってそのときは思いました。
そこから一気に調子乗りましたね。“もう少し資金あったらもっと勝てたのに”って」
──そのあとキャッシングされたと?
前田さん:「はい。まさか本当にやるとは思わなかったんですけど。
“勝てる自信あるし、どうせ返せるでしょ”って自分に言い聞かせて、クレカで30万円引き出しました。
それで、いきなりロットも3倍にして、ポジションも頻繁に持つようになって…。
今思えば、あそこで止める選択ができていれば全然違ったと思います💦」
ロスカットで資金が一瞬で吹っ飛んだとき、“現実が止まった”ように感じました
──ロスカットされた瞬間のことを覚えてますか?
前田さん:「めちゃくちゃ鮮明に覚えてます。
金曜の夜、雇用統計の日でした。ポジション持ったまま寝てしまって。
朝起きてチャート開いたら、ドル円が逆に動いてて、証券口座の残高が2万円台まで落ちてました。
“あれ?え、なんで?”って何度も更新して。ロスカット履歴を見て、膝から崩れ落ちました📉」
借金返すために“もう一度勝てばいい”って思って、さらに沼に沈みました
──そこで止まれなかったんですね?
前田さん:「止まれませんでした。“次で取り返せばいい”の思考が完全に支配してました。
またキャッシングして、今度は消費者金融にも手を出しました。
それで3社で借りて、追加で60万円突っ込んだんですけど…結果は同じ。
一時的に増えても、精神状態が不安定だからすぐ判断ミスするんですよ。
冷静さを保てないまま取引すると、本当に簡単に負けます」
消費者金融の督促が届いたとき、「あ、人生詰んだかも」って思いました
──借金の管理はどうしてたんでしょう?
前田さん:「してなかったんです。返済日も忘れて、滞納してました。
ポストに督促状が届いて、“次回訪問予定”って書いてあったときは心臓止まるかと思いました。
部屋の中、誰もいないのにずっと落ち着かなくて、チャイム鳴るたびにビクビクしてました📬」
誰にも相談できなくなって、生活もメンタルも崩れていきました
──周囲には相談されましたか?
前田さん:「誰にも言えなかったです。
家族にも職場にも、“投資始めた”ってすら言ってなかったので。
“どうしても言えない”って気持ちが強すぎて、ずっと1人で抱えてました。
精神的にもしんどくて、ご飯食べても味がしないし、寝ても疲れが取れないし。
何か楽しいこと考えようとしても、“返済どうしよう”がずっと頭に残ってるんです」
今なら冷静に言えます。「勝てると思ってる時点で危ない」って
──あの頃の自分に何か声をかけられるとしたら?
前田さん:「“一回落ち着け”って言いますね
勝てると思って資金突っ込んでるときって、興奮状態なんですよ。
思考がまともに働いてない。
FXって、勝率が大事じゃないんですよ。“やめどき”の判断と、“逃げる”勇気がないと全部持ってかれます。
今ならわかります。“勝ち”じゃなくて“守る”ことが一番大事だったんです😔」
まとめ|「絶対に勝てる」という思い込みは、人生を静かに狂わせていく
前田さんの体験から見えてくるのは、誰でもハマってしまう可能性がある“自己確信バイアス”の怖さでした。
「勝てると信じてるときが、一番視野が狭くなってた」
冷静な判断ができなくなってからのFXは、ただの投機でしかありません。
さらにそれをキャッシングや借金でやってしまうと、もう戻るのが難しい段階に入ってしまう。
最初は誰でも“小さく勝って”自信を持つものです。
でもその後にこそ、“自分の限界”と“逃げる準備”をしておかないと、資金だけでなく、自分自身の人生を賭けてしまう日が来るかもしれません📘